夏の暑い日、外から帰ってきて家の中に入ったら、「外より家の中の方が暑い……」と感じたことはありませんか?
窓を閉めて出かけただけなのに、夕方になって家に帰ると熱がこもってる。反対に、同じ気温でも大きな木の木陰に入ると、急に涼しく感じる。この違いに大きく関係しているのが、太陽から届く「日射」です。そして、この日射をできるだけ家の中に入れないようにすることを「日射遮蔽(にっしゃしゃへい)」といいます。
太陽から地球には、光とともにたくさんのエネルギーが届いています。太陽の光が窓から入って床や家具に当たると、そのエネルギーが熱に変わります。冬の晴れた日に、窓辺にいるとぽかぽか暖かく感じますよね。これは太陽から届いたエネルギーによって、身体や床などが暖められているからです。冬にはありがたい太陽の熱ですが、夏にはこの熱が室温を上げる大きな原因になります。
そこで夏の住宅では、太陽の熱が家の中に入ってから冷房で取り除くのではなく、できるだけ家に入る前に防ぐことが大切になります。
これが日射遮蔽です。
住宅には、屋根、外壁、床、窓など、外と室内を隔てるさまざまな部分があります。その中でも日射の影響を受けやすいのが窓です。
その影響を受けやすい窓に夏の強い日差しが窓から室内に入り込むとき、どれくらいの熱エネルギーが侵入していると思いますか?一般的な引き違い窓(幅1.6m × 高さ2mほど)1窓あたりに降り注ぐ太陽の熱量は、およそ1,000W(ワット)に相当します。
もしリビングに大きな窓が2枚あれば、夏場、部屋の中で電気ストーブを2台フルパワーで焚いているのと同じ状態です。いくらエアコンを強冷房で稼働させても、「冷房の冷気(対流)」よりも「窓からの太陽熱(輻射)」が勝ってしまい、部屋が冷えないのはこれが理由です。

壁や屋根には断熱材を入れることができますが、窓は光を取り入れる必要があるため、どうしても太陽からのエネルギーが室内へ入りやすくなります。窓から入った太陽光が床や家具に当たると、それらが暖められます。そして、一度室内に入った熱は、エアコンで取り除かなければなりません。
つまり、
日射が窓から入る
↓
床や家具が暖められる
↓
室内に熱がたまる
↓
エアコンでその熱を取り除く
ということが起こっています。それなら、最初から太陽の光を家の中に入れなければいい。これが日射遮蔽を考える基本です。
夏の日差しが強いとき、カーテンやブラインドを閉めている方も多いと思います。もちろん、何もしないより効果はあります。ただし、ここで重要なのが、「どこで日射を遮るか」です。カーテンは窓の内側にあります。そのため、太陽の光はすでにガラスを通過して室内まで入っています。カーテンが太陽の光を吸収して熱くなれば、その熱の一部は室内へ伝わってしまいます。
一方、外付けブラインド、シェード、すだれ、庇などは、太陽の光が窓に入る前に遮ることができます。室内で遮るか室外で遮るかで太陽熱のカット率は大きく異なります。

同じ「日差しを遮る」でも、室内に入ってから遮るより、外で遮る方が効果的なのです。夏に帽子をかぶるのと少し似ています。身体が熱くなってから冷やすのではなく、最初から直射日光を身体に当てない。住宅の日射遮蔽も同じ考え方です。

ここは少しややこしいところです。断熱性能の高い家なら、夏も勝手に涼しくなると思われるかもしれません。
しかし、断熱と日射遮蔽は役割が違います。断熱は、屋外と室内の間で熱が移動しにくくすること。日射遮蔽は、太陽から届く日射エネルギーを室内に入れないことです。たとえば、性能の良い魔法瓶を想像してみてください。魔法瓶は断熱性能が高いため、中に入れたものの温度を長時間保ってくれます。
しかし、その魔法瓶の中に熱を入れてしまえば、その熱も逃げにくくなります。住宅でも同じです。断熱性能が高くても、大きな窓から夏の日射をたくさん取り込めば、室内に入った熱は簡単には外へ逃げません。
だからこそ、高断熱住宅では、「熱を伝えにくくする断熱」と「そもそも熱を入れない日射遮蔽」を一緒に考えることが大切なのです。

日射遮蔽を考えるうえでもう一つ重要なのが、太陽の高さです。太陽は一年中同じ高さを通っているわけではありません。夏の太陽は高い位置を通り、冬の太陽は低い位置を通ります。この違いをうまく利用できるのが軒や庇(ひさし)です。南側の窓に適切な長さの軒や庇を設けると、夏の高い位置からの日射は庇で遮り、冬の低い位置からの日射は室内へ取り込む、ということができます。
つまり、太陽を一年中遮ればいいわけではありません。夏は遮り、冬は取り込む。季節によって太陽とうまく付き合うことが大切です。
南側の窓では庇が効果的ですが、東側と西側の窓は少し事情が違います。朝や夕方の太陽は低い位置にあります。特に夏の西日は、低い角度から窓へ差し込むため、水平に張り出した庇だけでは十分に遮ることが難しくなります。そのため東西面では、外付けブラインド、シェード、すだれ、縦方向のルーバーなど、低い角度から入ってくる日射を遮る工夫が効果的です。
窓は大きさだけではなく、「どちらを向いているのか」「何時ごろ太陽が当たるのか」まで考えて計画する必要があります。
日射遮蔽は、軒や庇、シェードだけではありません。窓そのものの性能も重要です。ガラスには、太陽から届くエネルギーをどれくらい室内へ通すのかを表す「日射熱取得率(η値)」という指標があります。この値が小さいほど、日射による熱を室内へ入れにくい窓になります。
ただし、ここでも「小さければ小さいほど良い」とは限りません。冬に太陽の熱を積極的に取り込みたい南側の窓と、夏の西日をできるだけ防ぎたい西側の窓では、窓に求められる役割が違うからです。方角や周囲の建物、庇の有無などを考えながら、窓の大きさやガラスの性能を選ぶことが大切です。
夏を涼しく過ごすためには、エアコンの性能だけを考えればよいわけではありません。まずは、家の中に余計な熱を入れないこと。
・窓の位置や大きさを考える。
・庇を設ける。
・シェードや外付けブラインドを利用する。
・方角に合わせてガラスを選ぶ。
こうした工夫によって室内へ入ってくる日射を減らすことができれば、エアコンが取り除かなければならない熱も少なくなります。
その結果、室温を保ちやすくなり、冷房に必要なエネルギーを抑えることにもつながります。断熱性能を高めることはとても大切ですが、夏の快適な家を考えるなら、それだけでは十分ではありません。
「熱を伝えにくい家」にすると同時に、「夏の熱を入れない家」にする。
冬には暖かい太陽の光を取り込み、夏には暑さの原因になる太陽の光を遮る。太陽をただ避けるのではなく、季節によって上手に利用する。それが、住宅における日射遮蔽の考え方なのです。